東京は江戸時代、「水の都」として栄えていたそうです。水の都とは、運河や水路、河川が都市景観の形成に大きな役割を果たしている都市の愛称であり、当時は東京湾へ流れる隅田川や荒川、神田川、江戸川、日本橋川、目黒川などの多くの川が貴重な輸送ルートとして活用され、文化や経済の面で重要な役割を担っていました。

時は流れて21世紀。デジタルの世界で新たな水路を構築し、再び水の都を創造しようとしている革新的企業があります。

それは渋谷ですか?それとも世田谷ですか?いいえ、違います。六本木の泉ガーデンに本社を構える、SBIホールディングスです。彼らの取り組みは東京という狭い地域に留まりません。アジアを対象としたグローバルな領域で、新たな市場の創造にチャレンジしているのです。

Ripple、それは波紋(はもん:さざなみ)。

SBIは米国Ripple社の株11.3%を保有し、2016年5月にはSBI Ripple Asiaというジョイントベンチャーを創設している。(出資比率:SBIホールディングス60%、Ripple Labs40%)

相手先のRipple共同創業者(現会長)でもあるクリス・ラーセン氏は、今回3度目の起業にあたるのですが、過去2社(Prosper、E-Loan)とも、SBIグループと合弁企業を設立しています。つまり、この事実を知っているIT業界の人間からすれば、SBIグループのRippleへの参入は、遥か昔から決定されていたように思います。

このSBI Ripple Asiaは、Rippleのソリューションに限らず、日本及びアジア地域で独自の事業展開を行う予定です。
ブロックチェーンを活用した 内外為替一元化コンソーシアム「BOSS ONLINE」(2016.11月号)
SBI Ripple Asia
機関投資家や金融機関に販売可能なブリッジカレンシーXRPは、国際決済コストを60%削減する!
Rippleは、XRPという仮想通貨を事業の出発点としており、2016年6月にニューヨーク州の金融サービス局(NYDFS)から、初めて機関投資家や金融機関を対象とした、正式なデジタル資産としたBitLicenseの認定を受けています。

金融機関は、世界中のノストロ口座に現地通貨を保有する代わりに、リップルネットワーク上にXRP口座を持てば、クロスボーダー決済のための流動性(リクイディティ)の一元化が可能になります。

金融機関はRipple solutionで、このデジタルアセットであるXRPをブリッジカレンシーとして活用すると、最大で60%(Rippleのシステムのみの場合33%)の国際決済コストを削減する事が可能になります。なお、必ずしも送金において、XRPは必須条件ではありません。XRPを活用した方が、コスト削減メリットが拡大します。
銀行のコスト削減例: グローバルな銀行間決済にリップルとXRP使用した場合のROI「Ripple」(2016.2月)
Ripple、銀行の「国際決済コスト」を60%削減するツール発表「ZUU online」(2017.3.16)
日本発!世界初!内外為替一元化コンソーシアムの3つの目的
現在Rippleのビジネスモデルは、XRPの販売のほかに金融機関向けのソフトウェアライセンス収入を主にしています。SBIホールディングスとSBI Ripple Asiaは、2016年8月に「ブロックチェーン技術等を活用した内外為替一元化コンソーシアム」構想を発表しました。

このコンソーシアムは、Ripple solutionをクラウド上で活用する日本発・世界初の試みであり、2017年3月に実証実験に成功し、年内にも商用化する事を目指しています。当初42行の金融機関から始まったこのプロジェクトも、実証実験完了時には47行に増え、2017年4月26日時点では56行に拡大しています。

コンソーシアムの大きな目的は、以下の3つになります。
1)国内外為替の一元化
2)24時間リアルタイム決済
3)送金コストの削減と新市場の開拓

内外為替一元化コンソーシアム Rippleを活用した送金プラットフォーム「RC Cloud」のコンセプト「Ripple」(2017.4.11)
内外為替一元化コンソーシアムは、「参加銀行とその顧客の為に、真に効率的な決済を実現する事」を究極の目的に掲げており、RCクラウドによって可能になったコスト削減メリットは、銀行の利ザヤ改善だけでなく、利便性という形で顧客にも還元されて行く事が望ましいと考えられています。

具体的には、1,000円以下の超少額決済における手数料の見直しに活かされます。日本は世界の中でもキャシュレス比率が最低水準(19%)なのですが、銀行はRCクラウドによって現金決済市場をターゲットにし、新規市場の開拓をして行く事が可能になります。

また、すでに日米欧豪大手7行が参加するGPSGコンソーシアムに参加している三菱東京UFJ銀行も、この国内コンソーシアムへも参加が決定しました。今回の件に関して、三菱東京UFJ銀行のデジタルイノベーション推進部長相原寛史氏は、以下のようにコメントしています。

『我々はRippleとともに、ブロックチェーン技術の力を使って顧客体験を変える新しいタイプの決済サービスを提供できることを非常に嬉しく思います。そしてこの技術に対してのコミットメントを示すために、日本の「内外為替一元化コンソーシアム」にも参加し、他の日本の銀行と協力して商用利用を進めていきたいと考えています。「内外為替一元化コンソーシアム」における経験をGlobal Payments Steering Groupにもたらすことができると信じています。』

これで三大メガバンクのうち、残りは三井住友銀行だけになります。コンソーシアムは今後の商用化を見据え、共通ゲートウェイや送金アプリを開発する他、実用化に向けた法的課題なども検討して行きます。
新送金システム国内連合、三菱東京UFJも参加「日本経済新聞」(2017.04.24)
“新技術”でいつでも送金OK 地銀などが新サービス「ANNnews」(2017.3.2)
そんなに時間がかかる話ではない!送金革命は世界で同時に起こるRCクラウド商用化ロードマップ
SBIホールディングスの北尾氏は、大和インベストメント、コンファレンス東京2017年で、『送金革命は、そんなに時間がかかる話ではない!すべての参加銀行が、このRCクラウドを利用すれば、全国銀行データ通信システム(全銀システム)や、国際銀行間通信協会(SWIFT)も要らなくなる。日本は昔のドコモのガラケーようなガラパゴスの世界になってはダメだ。グローバルスタンダードを常に追求し、構築しなければならない。現在のゼロ金利の中で、なぜ消費者は利子より高い送金手数料を銀行に払わなければならいのか?これはおかしな状況だ。』と発言しています。

それではビットコインより、遥かにあなたの生活にインパクトを与えるであろうこの革命は、いつから日本で始まるのでしょうか?RCクラウドの商用化へのロードマップも明らかになって来ています。

2017年3月の実証実験完了後、同年秋~冬頃には、外国為替における商用利用の開始を目指し、準備の整った一部の銀行(5行を目途)から年末には内国為替もスタート。2018年以降には本格的に参加行が加わって行くようです。
内外為替一元化コンソーシアム
銀行ブロックチェーン始動へ、国内47行の本気度 「日本経済新聞」(2017.3.3)
内外一元化コンソーシアム成果報告会「atpress」(2017.3.2)
すでにあなたの知らない所で、Rippleによる世界的な送金革命は始まっている!
日本から海外に送金する場合には、当然相手先銀行がRippleネットワークに対応している必要性があります。そこで今年の秋~冬頃から始まると言われている、外国為替の状況について考えてみたいと思います。

現在、三菱東京UFJ銀行も参加するGPSGの大手7行は、2018年初めの実用化を目指し、Rippleの標準化ルールを策定しています。日経新聞では『GPSG以外にも世界で90行程度の銀行が新サービスに参入する可能性がある』と報道されていますが、一方、海外のレポートではさらに増え、150行程度がRipple導入に取り組んでいるとの事。XRPediaさんの分析では、すでに世界の銀行トップ50のうち半分にあたる25行が、何らかの形でRippleに取り組んでいるようです。
RippleGlobalBanks
そこで、気になるのは海外の金融機関における直近のRipple導入状況です。世界最大の送金受領国のインドでは、2017年5月までに2つの銀行がRipple運用に動くと報道されていました。

ネット上では、2017年度のGlobal Bankにおける、Ripple活用に関するスケジュール資料が出回っています。ここでは、確かにインドのYes BankとAxis Bankが、2017年第二クォーターに導入する予定になっています。他にも英国のStandard CharteredとタイのSCB、少し遅れて日本のSBI Ripple Asiaも同じく第二クォーター中に稼働予定のようです。なお各大陸のブルーの箇所が、今年実際にRippleが稼働するエリアになります。しっかり中国も入っていますね。
RippleGlobalBanksTimeLine
そして、本日Rippleのグローバル送金ネットワークに、三菱東京UFJ (日)、 BBVA (スペイン)、 SEB (スウェーデン)、 Akbank(トルコ)、Yes Bank (インド)、  Axis Bank (インド)、 SBI レミット (日)、 Star One Credit Union (米)、 EZ Forex(米)、 Cambridge FX (カナダ)の10の金融機関が新たに加わった事が発表されました。これらの銀行は実証実験レベルを超えて、すでにRippleのエンタープライズ向けブロックチェーンを活用し、世界中で送金を行なっていると言います。SBIの2017年3月期の決算資料によれば、現在75社の金融機関が参加しているようです。

私達の知らない所で、三菱東京UFJやSBIレミットも、実際にRipple solutionを活用して国際決済を始めているんですね。もう、この流れは誰にも止められないでしょう。
Rippleのグローバル送金ネットワークに新たに10の金融機関が加わりました「Ripple」(2017.4.26)
SWIFTや世界中のノストロ口座を不要にする!銀行だけではないPaypalやAlipayも!
それでは、現在国際決済で利用されているSWIFTの仕組みとは、一体どのような仕組みなのでしょうか?SWIFTで取引される金額は、3日で世界の国内総生産(GDP)1年分に相当すると言われる程流動性があります。SWIFTを使った海外送金の場合、送金元の銀行から受取銀行へ送金メッセージが送られる一方で、実際の資金は銀行同士の口座間決済で行われる為、直接受取人の口座に振り込まるわけではありせん。

また銀行同士の国際決済契約(コルレス契約)がない場合、中継銀行(コルレス銀行)を介して送金する事が可能ですが、時間やコストの面で割高となっており、平均で2日以上かかり、そのうち4%は不履行になっています。日本のコルレス銀行でもある三菱東京UFJ銀行の海外送金手数料は、1件あたり3,000~5,500円に上ります。最近ではこれらの課題に加え、ハッキングなどのセキュリティー面の問題も持ち上がっています。

従来、Rippleは銀行間決済においてRCLを用いていましたが、現在は複数の異なるレッジャー(台帳)をつなぐ、インターレッジャープロトコル(ILP)にコンセプトを変更しています。これは必ずしも銀行システムに限らず、仮想通貨やPaypal、Alipayなどのe-wallet間の決済も想定されています。Rippleには、Googleも出資をしていますので、Google Walletやchromeなどでの利用も期待されます。

コンソーシアムが基盤として活用するRipple solutionについては、3月に販売された新書「成功企業に学ぶ実践フィンテック」のSBI Ripple Asiaのコーナーで紹介されています。さらにRippleを理解されたい方は、ぜひ一読される事をお勧めします。以下は、Ripple solutionの仕組みに関する説明動画になります。







【日本語訳】How Ripple Works - xCurrent「Ripple」(2017.3.31)
Ripple solutionとは:異なる複数の台帳やペイメントネットワークの相互運用を可能とするオープンで中立的なプロトコルであるインターレッジャー・プロトコル(ILP)を基盤とする、金融機関向け決済ソフトウェアスイートのことで、次世代型決済フローにおける3つの要素(メッセージング、決済、FX管理)を統合したソリューションです。

Ripple Connectとは:Ripple solutionの一要素で、金融機関の内部システムをインターレッジャープロトコル(ILP)に対応した台帳に接続し、金融機関の間での同時かつリアルタイムな決済を可能とします。Ripple Connectのメッセージレイヤーを通して、金融機関はコンプライアンス情報、手数料、推定支払処理時間などを相互にやり取りすることができます。

ILP Validatorとは:Ripple solutionの一要素で、支払いの成否を暗号理論的に確認し、取引参加者の間での資金の流れをコーディネートします。ILP Validatorによって決済リスクは除去され、決済遅延が最小化されます。
住信SBIネット銀行、内外為替一元化コンソーシアムにおいて「RCクラウド」の構築完了と実証実験を実施「日本経済新聞」(2017.3.2)
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