現在フィンテックの世界では、銀行とIT企業との競争の中で、融資、決済、投資、送金、預金、保険などの領域で、金融機関のアンバンドリング(個別機能の分解)が起こっています。そして同じように、貨幣の世界でも多様な通貨が競争するハイエクの世界がやって来ます。その時、今のお金の姿はどのようになっているのでしょうか。

貨幣の世界でも同じように、アンバンドリングが起こるだろうと予想します。

エンデは「エンデの遺言‐根本からお金を問うこと」にて、現在の「貨幣システム」における問題点を挙げ、貨幣の機能を4つに分類し、本来的に貨幣が持つ1~3の機能と4が混同されている為、必然的に環境、貧困、戦争、精神の荒廃などの問題が起こると考えました。つまり、一般に多くの人が貨幣の3大機能を唱える中で、エンデは更に一歩踏み込んで貨幣の本質に迫ったのです。

1)交換の手段
2)価値の尺度
3)価値の貯蔵
4)資本・投機のお金





従来の貨幣システムでは貧富の格差はますます広がる
それではこの「資本・投機のお金」とは、一体どのような意味を指すのでしょうか。現在の暗号通貨の基軸通貨であるビットコインは、殆ど投機としてしか機能していません。

エンデは「重要なポイントは、パン屋でパンを買う購入代金としてのお金と、株式取引所で扱われる資本としてのお金は、2つの異なる種類のお金であるという認識です」と言います。つまりエンデは、まずは貨幣の機能から、4を分離する必要性を指摘しているのです。

株式経済に投資されるお金は、成長を基盤とした未来の価値を折り込みます。市場において分配される利益配当も、基本的に市場へ再投資されます。この株式経済は、未来の資源を食いつぶしていると言えるのです。そもそもお金は人工的に作られたバーチャルな物なのに、錬金術的に『時間』によって『利子』が付きます。利子が利子を永遠に生む複利は、更なる貧富の格差を生む要因にもなっています。

エンデの作品には、この「時間」に関する問題定義として作られた映画『「モモ」 日本語NHK-FM(1)(2)』があります。同じくハリウッドでも、時間と通貨の問題をテーマとして取り上げた「TIME(タイム)」などがあります。

TIMEでは、人類は遺伝子操作で25歳から年を取らなくなり、人口増加を防ぐ為に時間が通貨として価値を持ちます。貧困層と富裕層の地域は、時間による通行料によって隔離されています。富裕層は永遠に生きる事が出来ますが、貧困層の人々は労働によってわずかな時間を受け取り生活しています。そして腕に刻まれた時間がゼロになると、人は命を落とす世界です。これは現在の通貨システムの問題点を、視点を変え上手く表現している作品だと言えます。
篠田麻里子さん吹替 「TIME/タイム」2012.7.18(水)リリース!「20世紀フォックス ホーム エンターテイメント」(2012.5.17)
 
問題の本質はお金の循環の停滞と対立する機能
根本的に銀行のシステムを変えようという議論があったと言われる1930年代。1929年の世界大恐慌時には、米国だけでも約4千種類の地域通貨が発行され、現在の仮想通貨以上のムーブメントが世界各地で起きました。あのケインズも1943年には、マイナス利子率の国際通貨、バンコール(Bancor)のシステム「ケインズ・プラン」を提案したと言います。

歴史はまさに繰り返されそうとしていますが、今回はテクノロジーによって、貨幣は新たな姿へと進化しそうです。未来のお金は、今からでは決して予想も付かない姿になっていると思われます。エンデは、科学技術は何をしてもよいものではなく、その結果に対する責任がある。そしてまずは常識を疑ってみろと言います。

人間は一つのお金を創ったつもりでいましたが、実は2つ創造していたのです。一つは交換の役に立ち、利用を促進し、経済の血液の役目をするお金。もう一つは、値打ちを減らさずに保存し、貸し付けて増やすお金。この2点は、根本的に対立するものであり、両立を望む事は矛盾しています。
ECU設計者リエターが提唱するグローバル通貨「テラ通貨」とは?
この本のエピローグでは、ベルナルド・リエター(1942年~)を注目すべき人物として紹介しています。彼はベルギー産まれの経済学者で、通貨ユーロの前身であるECU(エキュー)の設計と実施をした責任者の一人です。

バスケット通貨ECUに関わった、ベルギー中央銀行の電子取引システム総裁リエターの表現によれば、『当初金融システムに根本的問題があるとは考えていなかったが、水のなかの魚は水に関して何も疑わないが、水から出てみると、その水(マネー)は実に不思議な存在であることに気づいた』と言います。
英国がEU離脱! “仮想通貨”から生まれた欧州統一通貨ユーロの歴史を学ぶ「暗号通貨革命」(2016.7.11)
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そしてリエターは補完貨幣を研究し、ゲゼルの自由通貨の理論を生かした、地域通貨のグローバル版ともいうべき「テラ通貨」の制定を提唱します。そして現在の貨幣の持つ機能に関して、エンデより更に踏み込み5つに分類しています。

1)交換の媒体
2)価値の尺度
3)価値の保存
4)投機的利益の道具
5)支配の道具

リエターは、特に4、5に関するいびつさを指摘し、世界で動く外国為替の98%が投機の動機で、財とサービスの取引は2%という事実があると説明します。つまり実態経済が、投機目的のバーチャルなお金の動きに飲み込まれているのです。

そして以下、3点の問題点を挙げました。
1)ニクソンショック以降の固定具がない通貨体制
2)金融規制緩和政策
3)テクノロジーによるグローバルな情報化

これから貨幣のアンバンドリングが起こりますが、最終的にリバンドリングが起こり、進化したマネーが誕生すると予想されます。エンデは言います。人々はお金は変えられないと考えますが、我々の力で変えられると。なぜなら、『お金』は地球上にある限られた資源や環境ではなく、純粋に人間自身が作りだした、ただの紙やコンピュータの数字にすぎないからです。

通貨システムが変われば、未来の社会は大きく変わります。リエターは、日本で2冊の本を出版しています。あなたはこの本を手にする事によって、今後訪れる貨幣の未来の大きなヒントに気づくはずです。
ベルナルド リエター
日本経済評論社
2000-08

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