Grapheneのエコシステムから「第2のSteem」を探すこの企画。第3弾はアフリカのガーナでスタートしたブロックチェーンを活用した土地台帳記録、BitlandのCadastralを紹介したいと思います。

Bitlandは、Hernando de Sotoの『資本の謎』の理論に基づき、法的に認められていない土地を登録する事によって、「死んだ資本」に蓄えられた富を開放する事に焦点を当てています。少なくともその金額は、世界で約1,100兆円($9.3 trillion)に上ると推定され、私にとってRippleに次ぐ大きな可能性を感じるプロジェクトで、過去に何度か紹介しています。

しかし、このCadastralですが何やら様子がおかしいのです。プロジェクト元のアカウントである「bitland-global-1」から大量にトークンが放出され、過去1Cadastral=34.7BTSで取引されていた価格も、一時0.3BTSまで急落しており、時価総額も100分の1以下になっています。しかし、公式サイトを見るとプロジェクトは停滞どころか、大きく前進しているようにみえます。
bitland
Jacobs Edo氏がアフリカ大陸におけるインフルエンサーになる!?
異常な状況なので不思議に思って観察していると、暗号通貨革命のFacebookページに「Digital Transformation」の新刊発売イベントに関する動画が投稿されたので、直接聞いてみる事にしました。この本の著者であるJacobs Edo氏は、Bitlandのナイジェリア大使であり、OPEC国際開発基金(OFID)のメンバーです。Bitlandプロジェクトの議論も含むこの本は、ナイジェリアとアフリカ大陸の100人の指導者に配布されるようです。

なお、ナイジェリア政府と協力するブロックチェーン組織CDIN(Cryptography Development Initiative of Nigeria)は、既にBitlandと提携している事を発表しています。
Nigerian Government Offers Support To Blockchain Development Group「cointelegraph」(2017.1.17)


Digital Transformation Kickstarter Goes LIVE「Rex Edo」(2016.7.16)
ICOが失敗しトークンが大量放出!CCEDKとの提携も解除
まず、Bitlandはスタートアップを手助けするCCEDKと、ICOを含めたマーケティングの面でパートナーシップを組んでいました。当初、彼らのファンド(ICOO)にも組み込まれ、毎月収益の5%がCadastralのBuyBackに充てられる計画でした。

結論から言うと、これらの提携が全て解除されたようです。細かい事は色々あったようですが、大きな理由はICOの失敗だと言えます。総発行量の3,000万のうち、2,000万がCCEDKとBitland Globalのウェブサイトで販売される予定でした。一部では100万トークンが販売されたと報道されていましたが、CCEDK側によれば63万程度しか売れなかったそうです。
One Million Sold. Bitland Initial Offering is Hot「Bitcoin IRA」(2016.9.7)
つまり、当初ICOOのハンズオン型プロジェクトとして期待されていたBitlandですが、全く資金が集まらなかったのです。少なからず業界でも影響力があると評価されるCCEDKですが、まだ広告部門(BitTeaser)や取引所(OpenLedger)も育っておらず、ICOプラットフォームとしては時期尚早だったと言えます。Netexplo Awardを受賞したBitlandでさえこれですから、他のプロジェクトならもっと悲惨な結果になったかも知れません。Bitland Globalも、CCEDKにICOを丸投げした事も問題であったと言えます。

この提携解除はお互いにとって良い話ではない為、あまり大きくアナウンスされていないようです。さらに売れ残ったトークンはBurn(燃焼)しろとコミュニティーから言われたようで、『Burnするくらいであれば市場で放出する』というのが彼らの主張のようです。

すでにCadastralのほとんどが市場に放出され、「bitland-global-1」のアカウントには、2016年12月18日現在、10,229,320Cadastralsしか残っていません。つまり、このトークンの大量放出こそが、今回の時価総額の大幅下落の要因なのです。追記:結局、2017年2月1日を最後に「cadastral-alpha-oracle」のアカウントにあるオラクルの費用300万Cadastralsを残し、「bitland-global-1」のトークンは全て放出されました。
プロジェクトの方向性は大幅変更!本部はガーナからタックスヘイブン「モーリシャス」へ
そこで気になるのが、資金調達に失敗した後のプロジェクトの行方です。そもそもこのプロジェクトは、2014年にBitland Globalが創業された事から始まっており、すでに約2年が経過しています。後で記述するWhite Paperによれば、『営利企業であるBitland Globalが、各国の非営利団体と営利パートナーシップを組んで進められている』と説明されています。ちなみに前回は、非営利だと明記されていました。どうやらこの組織は、Bitland GlobalというLLC(有限責任会社)と、各地域で多くの土地に関連したNGOを持つようです。

ここ数カ月で、プロジェクトの方向性も大きく変わっています。ガーナでスタートしたBitlandは、9月にモーリシャス共和国とのコンタクトを機に本部を移し、土地登記プロジェクトの枠を超えて、スマートシティ計画の一環として動いています。注意:Bitland Globalの本社は米国です。
Mauritius can become 'Blockchain Valley「itwebafrica」(2016.9.21)
Mauritius
モーリシャスが、不動産投資信託Cadastralへの投資を加速させる!?
モーリシャスは人口わずか130万人の国なのですが、50か国以上あるアフリカ諸国の中でも1、2を争う経済的に豊かな島国です。ガーナが農村部中心だったとすれば、かなり大きな違いになります。更に重要な点はタックスヘイブンであると言う事です。パン・アフリカ投資の歴史的な拠点であり、インドや中国、アフリカ諸国などと租税条約を締結し、古くから国際投資の中間地として利用されています。

Larry C. Bates氏は、コインテレグラフの記事の中で『モーリシャスは、国際的なビジネスに対する不必要な二重課税を防止するために、現在法律を調整中である。インドはまだモーリシャスと交渉しているが、インドとの更なるビジネスに資する可能性がある。世界5位の総資産を持つ中国銀行は、モーリシャスとの契約を締結し、新しい本社を開設した。モーリシャスはアフリカで最大の銀行を持つ国の一つであり、東アジアで最大の銀行が他の国に利益をもたらす「Blockchain valley」である。』と述べています。

法的な問題がクリアーになり、金融機関が不動産投資信託(REIT)Cadastralを扱えるようになれば、大きなメリットを提供してくれそうです。モーリシャスは、海外からの投資を呼び込む事が期待出来るだけでなく、Bitland Globalのアフリカ全土の訓練および開発拠点としても利用されます。

以下、Twitterの投稿から新しいWhite Paperをダウンロードする事が出来ます。少なくともモーリシャスだけで、最初の3年間で約6億円(5milion USD)の経済効果をもたらす事が期待されています。ガーナと違いインフラも整っていますから、太陽電池式Wi-Fiネットワークのような大規模な資金も必要なさそうです。各国のNGOとパートナーシップを組むビジネスモデルから考えても、あまりコストが掛からないように思います。現在ベンチャーキャピタルを中心に、モーリシャスの測量の為のドローン(GPS/GNSS機器)などを収容する、Bitlandセンターの開設資金の調達に動いているようです。

なお、このWhite Paperは、私が尋ねるまで公になっていなかったようです。閲覧者も30人程度しかいないので、殆ど知られていない情報と言って良いかも知れません。追記:その後ブログにもアップされました。
How India’s Growing Bitcoin Use Will Drag Africa Along「cointelegraph」(2016.10.3)
Bitland Mauritius White Paper「chris-bates」(2017.1.10)
Mauritius
ICOも自分達のBitlandのサイトで細々と行われています。しかし、ベンチャーキャピタルを考慮してなのか分かりませんが、現在市場で1Cadastral=0.8BTS=0.000004BTCで取引されている中で、1Cadastral=0.015BTCという異常な値段が設定されています。プロジェクトが大きく前進しているとはいえ、正直こんな都合が良いICOが上手く行くとは思えません。

国際的な評価が高く、政府ともつながっているので何か隠れた材料があるのかも知れませんが、支援してくれる取引所も探しているようです。興味のある関係者の方がいれば連絡を取ってみても面白いかもしれません。なおCadastral自体は、BitSharesで発行されたトークンなので、OpenLedgerで出来高の多い順に「CADASTRAL_BTS」「CADASTRAL_OPEN.BTC」で購入出来ます。オープンレジャーにログイン後、オーダブック画面で右上のFINDMARKETSにCADASTRALと入力すると見つける事が出来ます。
今が買い時!?すでに5ヵ国でライセンスを取得、世界経済フォーラムで驚くべき事例として紹介される!
bitland5
ここまで書いていて少し怪しさを感じるプロジェクトなのですが、同じく多くの人がトークンの時価総額があまりにも下落している事もあり、信憑性で疑問を持っているようです。

しかし、Bates氏によればすでに5つの国(ガーナ、ナイジェリア、ケニア、ボツワナ、モーリシャス:南アフリカでも活動)で政府からライセンスを取得し、実際に土地の登録を開始していると言います。パイロットプロジェクトとしてのガーナのオペレーションシステムが、フランチャイズ展開のようにアフリカ大陸に一気にブレイクスルーしているのかも知れません。

さらに極めつけは、世界経済フォーラムのサイトで、Bitlandの取り組みが紹介されたのです。毎年1月に行われる年次総会、「ダボス会議」でも紹介されたら、かなり面白い展開になるかもしれません。

本物のプロジェクトであれば、むしろ今の価格はバーゲンセール。政府とのプロジェクトは時間を要しますが、ICOの価格に戻るだけでも100倍です。そんなBitlandの今後の展開に注目です。 (投資の判断は自己責任でお願いします。)
BitlandのCadastralが購入出来るのはオープンレジャーだけ!