世界の人口は今世紀中に100億人に達すると言われてる。それでは、今後最も市場の伸びが期待出来るマーケットはどこだろうか。それは『アフリカ』である。

米国に次ぐポジションまで上り詰めた中国でさえ、2040年を境に人口の伸びはピークに達し、以後日本と同じ高齢化社会へ突入すると言われている。唯一、今世紀最後まで伸び続けるのがアフリカであり、今後発展途上国の時代が来るのは間違いない。

今年8月、ケニアのナイロビで日本政府が主導し、アフリカ54カ国が参加した第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)が行われた。

経団連会長を含む70社以上の企業のトップを引き連れた安倍晋三首相は、経済構造改革や社会安定化促進などを盛り込んだ首脳間文書、「ナイロビ宣言」を採択。「アフリカは21世紀最大のフロンティアだ。日本はアフリカの夢をアフリカと手を携えて実現していく」と強調。基調演説で表明した官民総額300億ドル(約3兆円)の投資に関しては、「日本は約束を守る国であり、一つ残らず実行していく」と決意を示し、質の高いインフラの整備や人材育成などによりアフリカ経済の構造改革の促進を約束した。(外務省HP:TICAD
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アフリカ開発会議が閉幕 ナイロビ宣言を採択(16/08/29)「ANNnewsCH」
世界中のITプロジェクトから10大革新技術として選ばれたBitland
日本のFintech界を牽引する北尾氏率いるSBIホールディングス。ナイロビ宣言に基づき、世界初の多通貨取引所を目指すSBIバーチャル・カレンシーズで、ぜひ取り扱って頂きたいトークンがある。それはブロックチェーン技術を活用したアフリカの土地登記プロジェクト、Bitland(ビットランド)だ。

Bitlandは、パブリックなブロックチェーン技術を活用し、公正で不正が出来ない土地記録の作成を可能にする。このプロジェクトがスタートしたガーナでは、約78%の土地が未登録であり、農地に限って言えば90%に上るという。個人はこのサービスによって財産の証明と行政サービスを利用出来、一方、政府は税収を上げるために活用出来る。所有者が明確でない土地に関しては、正式に政府管轄として登記する事も可能だろう。ブロックチェーン技術は、インターネット上の決済インフラだけでなく、リアルな世界のインフラ整備にも利用されようとしているのだ。

Bitlandのプロジェクト自体は、Rippleと同じく政府と協力して進められている。現在はパイロットプロジェクトとしてガーナで土地委員会と、世界銀行によって作成された土地管理プロジェクトで働いており、ナイジェリアモーリシャスに拡大しようとしている。いずれはアフリカ大陸だけでなく、他の大陸への導入も目指しているようだ。

この注目度の高い取り組みは、今年(2016年)Netexplo Awardを受賞している。Netexploとは、デジタル技術の社会的、文化的影響を予測する機関であり、2008年から毎年ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)と共同で、10大革新技術賞を選定している。今回日本からも人口知能を使ったプロジェクト、「ロボットは東大に入れるか」が選ばれたが、Bitlandは世界中の数千に及ぶIT系プロジェクトの中から、社会に影響を与える革新的なプロジェクトの一つとして評価を得ているのだ。受賞後、Bitlandは28の地域で共同プロジェクトを開始している。
Netexplo Award Winners 2016「Netexplo」

Bitland - Netexplo 2016 Awards Presentation
Bitlandがもたらす信用創造の仕組みとは?
Bitland Globalは営利目的の企業でCadastralというトークンを発行し、非営利団体である各国のBitlandチームと営利パートナーシップを結んでプロジェクトを進めている。土地登記が進めば、一般市民から政府、企業までが利用可能となり、市民は資産を持ち、土地の売買が自由になる。海外からは援助ではなく投資を促し、民間における商業施設の開発も進み、市民は今まで不可能であった土地を担保に銀行などから借り入れも行えるようになる。発展途上国は、未登録の土地の証明が進むだけで新たな資産を生み、それを資本として活用出来る。つまりレバレッジを活用し、より大きな投資を生み出す事が可能になるのだ。

世界的に知られているペールの経済学者、Hernando de Sotoによれば、少なくとも世界の貧困層が所有する未登録の土地の価値は、約930兆円($9.3 trillion)に上ると推定している。

Rippleのビジネスモデルが世界中の負債を資産に変えるとするならば、『Bitlandは、資産の登録によって新たな資本を生み出し、負債を創造すると言って良いだろう。』この信用創造の仕組みが機能すれば、アフリカ国家のGDPは飛躍的に上昇するに違いない。

Bitlandのトークン保有者への還元モデルの可能性
最終的にトークン保有者は、スマートコントラクトによるマイクロファイナンス(小口融資)契約の対価を、投資リターンとして得る事が可能になるようだ。土地記録に紐づいたブロックチェーン技術は、借り入れ先を追跡する事が容易になり、投資家は直接ROI(投資収益)を受け取れる。

インターネット上で小口融資を募り、それを取りまとめて発展途上国の個人事業主に融資するモデルは、既にNPOのキーヴァ(Kiva)が行っている。驚くべきがその返済率であり、なんと97.1%という高水準を確立している。なお、Kivaは営利目的ではないため、貸し手には利子は付かず、返済保証もない。(2016年11月時点)

Bitland GlobalのLarry C. Bates氏は、Bitlandはただの土地登録だけでなく、多くの要素を持っていると言う。将来Bitlandによって発展途上国の商業施設の地価が上昇すれば、土地情報に紐づいた信用度の高い借り手と、新たなビジネスモデルも築けるかも知れない。つまり安倍首相も互恵の段階に入ったと言うように、アフリカ市場の成長とともに、対等なビジネスパートナーとして、適切な報酬を受け取れる可能性もありそうだ。

基本的にBitlandでは、従来より簡単にモバイル端末上で土地の売買が可能になる。トークンホルダーは、将来的に小口融資ではなく、土地を担保とした高額融資も可能になるかも知れない。私はBitlandのビジネスモデルには、P2Pで融資サービスを提供する、プロスパー(Prosper)やレンディングクラブ(Lending Club)を遥かに超える、分散型プラットフォームを実現するポテンシャルがあると感じている。つまりIoV(Internet of Value)の世界では、デジタルマネーに限らず、あらゆる価値の移転が可能になるが、将来は株式や債券に留まらず、土地の所有権までも譲渡可能になるだろう。
Kivaって何?
ICOによる資金調達の目的とBitlandセンターの役割
プロジェクトは、NLSというロジスティック会社を経営するガーナのNarigamba Mwinsuubo氏(旧 Bitnation Executive Assistant)が2014年11月にBitland Globalを創業した事に始まる。その後2015年5月に、アメリカ人のLarry C. Bates氏(旧 Factom Community Leader)が加わった事により、プロジェクトは大きく前進しているようだ。なお現在はロゴも一新されている。Bitlandはバーチャル国家を目指すBitnationと違い、政府と全面的に協力している点が面白い。またFactomは、ホンジャラス政府と類似する、土地登記サービスを行っていた。(2015年12月に停止)

White Paperによれば、BitlandのトークンであるCadastralは、初期に3,000万が発行され、ICOのPhase1、2で、それぞれ1,000万(合計2,000万)が販売され、残りの1,000万は、100万がICO期間中の通貨バスケット、200万が従業員や下請け業者の支払い、300万が今後99年間に渡るスマートコントラクトのオラクルの費用、最後の400万が政府がCadastralを購入する為の準備金という内訳になっている。

ICOによって集められた資金は、太陽電池式Wi-Fiネットワークの整備の為の、Bitlandセンターの建設計画に使用されるようだ。この施設はインフラ設備のハブとして期待されるだけでなく、地元の人々がプロジェクトに参加する方法を学ぶ、教育センターとしても利用される予定だ。コインテレグラフの記事によれば、ICOはこのガーナとナイジェリアの間に建設予定のBitlandセンターの為に、4,000~5,000BTCの資金調達を目標としていたようだ。この金額は、当時のレートで約3億~2億3千万円に上る。最終的にいくら調達出来たのかは不明だが、結果はあまり芳しくなかったように思う。
Blockchain Real Use Case: Land Inventory in Africa and Beyond 「cointelegraph」(2016.8.20)
しかし、そももそもなぜこんな施設が必要なのであろうか。それは現在ガーナでは、常に24~48時間に渡って電力不足による「計画停電」が実施されており、インフラ面が不十分な点が大きい。ガーナは、西アフリカ地域で2番目の経済規模を有する低中所得国であるが、携帯、パソコンなどの通信機器の充電だけでなく、信号が止まったり、食料も保存出来ないなど、かなりひどい状態らしい。富裕層は自家発電機を持っているらしいが、これではモバイル端末でブロックチェーンサービスを利用する以前の問題である。停電が起こってもダウンしないWi-Fiネットワークを提供する事が、Bitlandセンターの目的のようだ。

従ってBitlandセンターの建設は、緊急を要するものではないだろう。プロジェクト自体はICOに限らず、政府の投資部門と会合を持ったり、投資条件の付いたスタートアップのコンペティションに参加するなど、常に資金獲得に動いているようだ。個人的には貧困地域のアフリカには、ビル&メリンダ・ゲイツ財団やソロス財団など多くの資産家が支援しており、志が高く社会的に意義のあるプロジェクトであれば、必ず誰かがバックアップするのではないかと楽観視している。

なお、Googleなどで現在のガーナの計画停電に関して、現地の生の情報を調べてみた。そもそもこの計画停電の原因は、電力供給機材がガーナ独立時のもので古く、電力の需要に見合った現状に合っていないようだ。電力会社も政府に対応を求めているようだが、政府も次の選挙迄の票稼ぎとして、対応を先延ばしにしているとの噂。あくまでも推測の域を出ないが、次の選挙は来月2016年12月7日に行われる。以下は、ガーナ経済に関するレポート。
ガーナ経済の資金需要と商業銀行の役割ー現状と課題ー「高山晃郎」(2015.12)
日本におけるBitlandに関する記事は、現在「日本経済新聞」と当ブログぐらいだと思う。おそらくBitsharesのDACという概念に共感し、スタートアップの資金調達の支援を担う、OpenLegerの動向を追っていなければ知る由もなかっただろう。トークンの時価総額も低く、アフリカには政情不安という大きなリクスが付きまとうが、BitlandはRippleに次ぐ大きな可能性を感じるプロジェクトだ。(投資の判断は自己責任でお願いします。)

仮想通貨の登場により、遥か遠いアフリカ市場にも手軽に投資が可能となった。SBIバーチャル・カレンシーズには、ぜひ日本の仮想通貨業界のリーダーとして、 アフリカ経済の構造改革の促進に一肌脱いで頂きたい。
仮想通貨だけじゃない 世界変えるブロックチェーン 「日本経済新聞」(2016.3.3)
BitlandのCadastralが購入出来るのはオープンレジャーだけ!