『これまでは、伝統的企業がドットコム企業に滅ぼされた。今度はドットコム企業がDACに滅ぼされるわけだ。』経済学者の野口悠紀雄氏の「仮想通貨革命」に出てるフレーズです。これは私にとって衝撃的な内容でした。ビットコインの存在自体は、遥か昔からIT系のニュースサイトで知っていましたが、当時は全く興味が持てませんでした。しかし、この本でDACの存在を知ってから、暗号通貨への意識が変わり、真剣に調べるようになったのです。

ビットコインなどに興味を持つ方の多くは、テクノロジーや投資的な視点で興味を持つ方がほとんどかも知れません。しかし、私の興味の対象は、テクノロジーの変革によって、社会がどのように変わり、新たなビジネスモデルがどのようになるかという点です。

人工知能もブロックチェーンも同じ自動化されたシステムです。この界隈におけるオートメーション化された組織の考えに、DAC(Decentralized Autonomous Corporation:自立分散型企業)と、DAO(Decentralized Autonomous Organizarion:自律分散型組織)があります。両方とも組織の管理者をプロトコルに置き換え自動化するという概念です。

私はこの2つの正確な定義は分からないのですが、自分の中ではDACは会社の最高責任者である経営者を代替する(究極的にはAIが意思決定を行う)、DAOはコミュニティーに参加する人間達が意思決定を行う事だと理解しています。組織にとって最もトップの意思決定が大切だと考えている私にとって、当然DAOという選択肢より、BitSharesが掲げるDACのビジョンに惹かれてしまいます。DAOに関しても、将来参加者はAIから与えられた情報をもとに、意思決定を行うようになるとさえ思います。
中央の無い組織は成功しない「暗号通貨革命」(2016.1.20)
Rippleは、人工知能の重要な構成要素でもある個人情報に基づいた決済情報やバランスシートという「データ」を扱うプロトコルです。そのパートナーでもあるAccentureは、企業は正しい視点を持つ必要があり、これまでの認識を変える5つのトレンドを理解し、組織に「変化」という文化を組み込み、「人に力を与える」事が必須だとしています。

その5つのトレンドとして「インテリジェント・オートメーション」「流体化する労働力」「プラットフォーム・エコノミー」「破壊を予期する」そして最後に「デジタル時代の信頼」を挙げています。

先日政府は「情報銀行」の創設に関する発表をしましたが、Accentureは『デジタル社会における企業は「信頼」の為に、倫理規範とサイバーセキュリティーを構築する事は必要不可欠であり、データの保護だけではなく、どう活用するかの視点で倫理が問われる時代になる』と伝えています。
「情報銀行」創設へ指針 政府、通販データ管理などで 「日本経済新聞」(2016.9.20)

Accenture Technology Vision 2016 (日本語字幕)「Accenture Japan」(2016.5.2)
これからはビジョンを描き、AIを活用して未来を予測し、精度の高い意思決定を行う組織のみ生き残る
このブログは、自分が学び感じた事をアウトプットする場として活用してます。しかし書き始めた当初から感じる事は違和感ばかりです。最近それもMAXに達しています。なぜなら、すべての発想がビットコイン中心に考えられている気がするからです。本来テクノロジーはより良い社会を作る為に活用されるべきなのに、無理やりビットコインに当てはめようとしている気がします。

例えばTheDAOの例を考えて見ましょう。時代はロボアドバイザーが人工知能で投資をアドバイスしてくれる時代です。それが素人投資家が集まって皆で投資先を決めましょう…。何やらおかしいと感じるのは私だけでしょうか。スタートアップへの投資ですからデータが乏しいとはいえ、最先端であるはずのブロックチェーンテクノロジーが時代に逆行しているような気さえします。

ハッキングによる盗難事件に関してもそうです。問題が起こったら解決するのがトップの仕事。世界はAIによる暴走が起こった時に、そのアルゴリズムを止める方法や倫理を模索しているのに、この界隈ではあり得ないと考える人がほとんどのようです。

またEthereumのビジョンを描いたヴィタリック・ブテリン氏が、ETCをサポートしないと言っているのに、それを支持しない人もいるようです。そもそもETHは開発途中なのに「一体誰が最後まで責任を持って開発するの?」と思ってしまいます。

野口悠紀雄氏は著書の中で、「いまITの世界では、GoogleとAppleが覇者だ。それに加え、AmazonやeBayなどのeコマースがあり、さらにSNSがある。そうした勢力図が、大きく変わる可能性がある。GoogleやAppleを乗り越えるDACが登場しないとは言えない。」と主張しています。しかし本当にそうなるのでしょうか。

私も当初中抜きによって同じような事が起こるかも知れないと考えた時もありましたが、最近では必ずしもそうはならないだろうと考えを改めつつあります。過去このブログでは、企業はDACと戦って行く為に、以下のような対応をしなければならないだろうと予測しました。

『企業は、はじめパニックになるかも知れませんが、そこではじめて「P2Pのデジタル公開台帳」の暗号技術が、世の中の価値に置き換わっている事に気づきます。生き残る為に、投資家、従業員、顧客、取引先など、企業に関わるあらゆるステークホルダーとの価値を見直し、暗号技術に再分配しなければならない作業の決断に迫られるはずです。つまりゲームのルールが違うDACの参入によって、ビジネスのやり方を根本的に変えなくてはなりません。』
デジタル公開台帳は、広告収益モデル中心のネット企業を襲う「暗号通貨革命」(2015.6.12)
そしてビットコインというDACの競合にあたるお堅い銀行の三菱東京UFJでさえ、来秋独自の仮想通貨MUFGコインを発行し同じ土俵で勝負します。当然危機意識の強い企業のトップほど、競争環境の変化を感じて動くわけです。今でも野口悠紀雄氏は、「ドット・コム企業」の売り手と買い手をマッチングする経営モデルは陳腐化し、「楽天やAmazonなど電子商取引業者は滅ぶ」と予想しているようです。しかし、既に銀行ですら仮想通貨を発行するのですから、同じように楽天やAmazonも同様の対応をしてもおかしくはありません。

つまり今後は、DACのブロックチェーンより人工知能の方が圧倒的に重要なテクノロジーになるだろうと感じるのです。なぜなら組織にとって最も重要なのはトップの判断であり、組織の意思決定をサポート(代替)するのが人工知能だからです。そして人工知能の開発力こそ今後ビジネスの成否を決定付ける重要な要素であり、その開発に必要な資源を持っているのが、GoogleやAppleでありAmazonだと思うのです。

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